海洋観測用のNASA衛星、世界の灌漑水路も監視可能か 米大学研究

地球周回軌道上の観測衛星が地表の農地と灌漑水路ネットワークに向けてレーダー観測を行うイメージ図
AI生成イメージ(概念図)
宇宙研究機関

海洋観測用に開発されたNASA衛星が、従来の想定を超えてアジアの灌漑水路の水位変動を高精度に捉えられることが研究で示されました。

3 POINTS
●海洋観測衛星SWOTのデータを用い、アジア22カ国の灌漑水路約80万キロメートルを分析したところ、85%以上の区間で中〜高信頼度の水位測定が可能と判明した。
●幅20メートル未満の狭い水路は設計上観測困難とみられていたが、機械学習による水路地図データとの重ね合わせにより有効性が実証された。
●周囲が開けた水路では精度が高く、今後は南アジアや米国西部での水管理支援ツールへの応用が期待されている。
85%以上
中〜高信頼度で水位測定可能と判定された割合
約80万km
研究で分析されたアジア22カ国の水路延長
37.5%
高信頼度で観測可能と判定された区間の割合
46.9%
中程度の信頼度で観測可能と判定された区間の割合

海洋や大規模な水域の観測を主な目的に打ち上げられたNASAの衛星が、世界各地の農業用灌漑(かんがい)水路の水位変動も監視できる可能性があるとする研究結果を、米ワシントン大学などのチームが発表しました。論文は9月30日付の学術誌『Geophysical Research Letters』に掲載されています。

世界の農業を支える灌漑水路は、多くの地域で包括的な監視手段が整っておらず、現場では限られた水位計や巡回点検に頼った管理が続いています。2022年12月に軌道投入された衛星「SWOT」は干渉計レーダーで地表水を観測していますが、幅20メートル未満の狭い水路は観測性能の限界に近く、従来の設計段階では捉えられないと考えられていました。

研究チームは、機械学習などで整備された水路地図データにSWOTの観測データを重ね合わせ、アジア22カ国の灌漑水路約80万キロメートルを対象に分析しました。その結果、全体の85%以上の区間で中程度から高い信頼度をもって水位測定が可能であることが示されました。内訳は高信頼度が37.5%、中程度が46.9%、低信頼度が15.6%で、米国内の実測値と照合した検証でも整合性が得られたとしています。

幅が広く周囲が開けた水路では精度が高かった一方、水路沿いの生い茂った植生が観測上の主な障害として挙げられています。研究チームは現在、南アジアや米国西部での水路管理を支援する実用ツールの開発を進めており、水資源の効率的な利用や干ばつへの備えに役立つと期待されています。

情報源: 元記事を確認
washington.edu