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科学報道記事
米ノースウェスタン大が新装置により単一の陽電子を絶対零度に近い真空中で数カ月間捕捉。粒子を破壊せず、物質と反物質の微小な差異を探る精密測定への道を開いた。
3 POINTS
●ノースウェスタン大学の研究チームが「単一陽電子量子サイクロトロン」を開発し、単一の陽電子を数カ月間にわたり捕捉した。
●電場と磁場を用いて絶対零度に近い真空中に隔離し、粒子を破壊することなく最低エネルギー状態で量子制御を可能にした。
●電子と同等の高精度で陽電子の磁気的性質などを繰り返し測定できるようになり、物質と反物質の差異検証が期待される。
数カ月
陽電子の捕捉期間
1個
捕捉・制御された反物質粒子(陽電子)
WHY IT MATTERS
理論上は物質と同量存在するはずの反物質が宇宙にほとんど見当たらない謎の解明に向け、物質と反物質の微小な差異を高精度で検証できる新たな実験手法となるため。
米ノースウェスタン大学のジェラルド・ガブリエルセ氏率いる研究チームが、単一の反物質粒子である陽電子を数カ月間にわたって捕捉することに成功した。研究成果は学術誌『Physical Review Letters』に掲載されている。
反物質粒子は通常の物質に触れると対消滅を起こしてエネルギーを放出するため、保持や調査が極めて難しい。研究チームは「単一陽電子量子サイクロトロン」と呼ばれる装置を開発し、電場と磁場を利用して絶対零度に近い真空中に陽電子を隔離した。
この極低温下で陽電子は最低エネルギー状態となり、直接触れることなく量子状態を高精度に制御できるようになった。粒子を破壊しないアプローチのため、単一の反粒子を長期間保持しながら測定を繰り返すことが可能だという。
電子と陽電子は質量が同一で電荷が正反対であるなど共通点が多い一方、これまで見過ごされてきた微小な差異が存在するかどうかが注目されている。電子では磁気的性質などの精密測定がすでに行われているのに対し、陽電子では同等の精度達成が困難とされてきたが、アメリカ物理学会によると、今回の新装置によって測定が可能になる見通しだという。
TAKEAWAY
反物質粒子を破壊せず長期保持する新手法により、高精度な測定を繰り返して物理学の未解明な謎へ迫ることが可能になった。