がんの脳転移初期に「脆弱な期間」を発見 既存薬による微小転移の排除に道

脳組織内の微小血管周辺に付着する初期のがん微小転移細胞を表した科学イラスト
AI生成イメージ(概念図)
ヘルス報道記事

がん細胞が脳へ転移する極めて初期に生じる「増殖休止」の隙を突き、既存薬を含む3薬剤で微小転移を排除できる可能性が示されました。

3 POINTS
●がん細胞が脳転移する初期に適応のため一時休止する「脆弱な期間」を特定
●既存承認薬2種を含む3つの薬剤で微小転移の排除に成功(マウス・ヒト組織)
●微小転移を捉える診断法は未確立なため、チームはバイオマーカー探索と臨床試験を目指す
3種
微小転移排除に効果を示した薬剤数(うち2種は既存承認薬)
6年以上
CNIOを中心に進められた研究期間
約20
研究に参加した5カ国の研究機関数
WHY IT MATTERS
がんによる死亡の多くを占める転移に対し、症状が現れる前の微小段階で叩く「予防的治療」や、外科手術後の再発防止に向けた新たな創薬・治療戦略の道を開く可能性があります。

がん細胞が脳へ転移する極めて初期の段階において、細胞が一時的に増殖を休止し、脆弱になる期間が存在することが判明しました。スペイン国立がん研究センター(CNIO)を中心とする国際共同研究チームがマウスおよびヒト組織サンプルを用いて検証し、既存の承認薬を含む3種類の薬剤によって微小転移を排除できることを示しました。研究成果は科学誌『Cancer Cell』に掲載されています。

肺や乳房、皮膚などから移動したがん細胞は、脳という異なる環境に適応する過程で多くが死滅します。研究チームによると、生き残った細胞は「増殖休止」と呼ばれる一時的な段階に入り、攻撃的な挙動を止めて適応を試みます。チームはこの期間に働く分子メカニズムを特定し、標的となる薬剤を投与することで、細胞が適応できずに死滅し、検知可能な転移へ成長する前に排除されることを確認しました。検証された3つの薬剤のうち2つは、すでに他の適応症で承認されているものです。

さらに、この分子プロセスは形成済みの転移巣の辺縁部(浸潤先進部)でも働いていることが示されました。これにより、症状が現れる前の早期予防だけでなく、手術後の再発を防ぐ新たな戦略につながる可能性も示唆されています。

現時点では微小転移を検出できる診断技術やバイオマーカーが存在しないため、直ちに臨床応用できる段階ではありません。研究チームは中長期的な目標として臨床試験の開始を掲げており、薬剤の有効な組み合わせの検証や、微小転移を捉えるバイオマーカーの探索を進めています。

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news-medical.net