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科学報道記事
世界最高齢の陸生動物とされる194歳のゾウガメの細胞が、5歳並みの若さを保っていると判明。DNA修復やエピゲノムの安定性が、長寿や老化抑制の謎を解く手がかりとして注目される。
3 POINTS
●194歳のアルダブラゾウガメ「ジョナサン」の細胞が生物学的に5歳並みの状態を保っていることが判明
●採血を避け口腔粘膜からDNAを採取・解析し、老化を抑える287の特有な遺伝子変異を特定
●エピゲノムの安定やミトコンドリア機能の維持が確認され、将来的な抗加齢研究への応用が期待される
194歳
世界最高齢とされるゾウガメの年齢
5歳並み
細胞が保つ生物学的な年齢
287
特定された特有の遺伝子変異数
WHY IT MATTERS
約2世紀にわたり細胞やエピゲノムが劣化しない仕組みの解明は、将来的に人間における慢性炎症の抑制やがんリスク低減、加齢に伴う疾患を防ぐ新たな治療法開発につながる可能性がある。
世界最高齢の陸生動物とされる194歳のアルダブラゾウガメ「ジョナサン」の細胞が、生物学的には5歳前後の若い個体に近い状態を保っているとする研究結果が、学術誌『Science Advances』に掲載された。英ケンブリッジ大学やカレル財団の研究チームがDNA解析を行い、加齢に伴う衰退を抑える287の特有な遺伝子変異を特定した。
南大西洋の孤島セントヘレナで暮らすジョナサンの調査にあたり、研究チームは高齢による健康リスクに配慮して採血を行わず、口腔内の粘膜を綿棒で採取してDNAを抽出した。解析の結果、遺伝子の働きを制御するエピゲノムがほぼ2世紀にわたり極めて安定しており、DNA修復やミトコンドリアによるエネルギー産生に関わる機能が維持されていることが示された。
研究チームは、こうした細胞レベルの安定性が、組織の劣化や加齢性疾患の発症を遅らせる要因になっている可能性を指摘している。過去に117歳まで生きた女性を調べた研究でも、特定の「長寿遺伝子」ではなく、健全なミトコンドリア機能や強いオートファジー(自食作用)が保たれていたことが判明しており、研究チームは細胞の健康維持という共通点に着目している。
このメカニズムの解明は、将来的に人間の慢性炎症やがんリスク低減などの治療法開発につながる可能性が期待される。ただし、今回の成果は1頭のゾウガメを対象とした初期段階の知見であり、遺伝子を安定させる分子経路の特定やヒト細胞での再現性の確認など、さらなる検証が必要とされている。