量子ビット間の光子吸収率を最大100%へ ウィーン工科大、光導波路による新手法を提案

光導波路を通過する光子の波形が伝送中に変化し、吸収に適した時間反転形状へ整えられる様子を示す科学イラスト
AI生成イメージ(概念図)
科学報道記事

ウィーン工科大学が光導波路の分散制御で光子の波形を反転させ、量子ビット間の光子吸収率を従来の約54%から最大100%へ引き上げる手法を理論提案した。

3 POINTS
●量子ビット間の光子吸収率は従来約54%にとどまり、量子通信や量子コンピュータの大きな障害となっていた。
●光子の波形は鐘のように減衰するが、光導波路内の分散を制御して時間反転波形へ整形することで完全吸収が可能になる。
●シミュレーション上では理想条件下で100%の吸収を達成できるとされ、受動的な構成で技術的実現性も見込まれている。
約54%
従来の光子吸収成功率
最大100%
理想条件下での理論的吸収率(シミュレーション)
WHY IT MATTERS
量子ビット間で単一光子を受け渡す際の低効率は、量子ネットワークや量子コンピュータの実用化を阻む根本的な課題でした。外部制御に頼らない光導波路の受動的な波形整形により、大幅な効率改善が期待されます。

ウィーン工科大学の研究チームは、特殊に設計した光導波路で光子の波形を整形し、量子ビット間の光子吸収効率を大幅に高める手法を提案した。理論計算とシミュレーションによると、理想的な条件下では従来の約54%から100%に達する可能性があるという。成果は米物理学会誌『Physical Review Letters』に掲載された。

量子技術では量子ビット間で単一の光子を受け渡す処理が不可欠だが、従来手法では受信側の吸収成功率が約54%にとどまり、量子コンピュータや量子ネットワークの実現に向けた課題となっていた。

同大学のツェユ・クアン博士によると、量子ビットから放出される光子は単純な粒子ではなく波の性質を持つ。その波形は鐘の音のように初めが強く徐々に減衰するため、別の量子ビットが吸収しにくい形状となっている。最適な吸収には、徐々に強くなってからピークを迎える波形が必要とされる。

研究チームはこの課題に対し、量子プロセスの可逆性を示す「時間反転対称性」の原理に着目した。光導波路内では周波数成分ごとに光の進む速度が異なる「分散」が生じる。この分散を制御して伝送中にパルス形状を変化させ、受信側の量子ビットが完全に吸収できる時間反転波形へと整えるアプローチを導き出した。

カルロス・ゴンザレス=バレステロ教授は、計算結果から必要な構成は技術的に実現可能と示唆されていると説明する。現時点で実験による実証は行われていないものの、シミュレーションは光子転送の信頼性を大幅に向上させ、将来の量子技術の効率を高められる可能性を示している。

TAKEAWAY
光導波路の分散制御で光子の波形を時間反転させる新手法により、量子ビット間の光子吸収率を最大100%まで高められる可能性が示された。
情報源: 元記事を確認
scitechdaily.com