超巨大ブラックホールのジェット、銀河の星形成を抑制か 進路上のガス加熱を観測

銀河の中心核から宇宙空間へ細く伸びる強力なジェットが、周囲に広がるガスを細長く照らし出しているイメージビジュアル。
AI生成イメージ
宇宙超巨大ブラックホールから噴出するジェットが進路上のガスを集中的に加熱し、星の材料となるガスの流入を阻んで銀河の進化にブレーキをかけている可能性が示された。
10〜20倍
銀河周縁物質(CGM)が広がる範囲(可視領域比)
数百
解析対象となったジェットを持つ銀河の数
数十万光年
ジェットの影響が及ぶ距離の規模
3 POINTS
●大質量銀河の周囲に広がる銀河周縁物質(CGM)は可視領域の10〜20倍におよび、星の材料となる膨大なガスを蓄えている。
●DESIとLOFARの観測データを結合解析した結果、ジェットの進路上でのみ強い電離水素の輝き(Hアルファ線)が確認された。
●太陽系サイズのブラックホールが数十万光年先までガスを加熱・攪乱し、星形成の沈静化を招く仕組みが示唆された。

銀河中心の超巨大ブラックホールから噴出する強力なジェットが、銀河の外側に広がるガスを加熱し、新たな星の形成を妨げている可能性があるとする研究結果が発表された。銀河の周囲に材料となるガスが豊富にありながら星形成が進まないという、天文学の長年の謎を解く手がかりとなる。

天の川銀河などの大質量銀河の周囲には、「銀河周縁物質(CGM)」と呼ばれる膨大なガスが広がっている。その範囲は銀河の可視領域の10〜20倍に達する。このガスが冷えて銀河内部へ流れ込むことで新たな星が誕生するが、実際の銀河では予想されるほど活発に星が生まれておらず、何がガスの冷却や流入を阻んでいるのかが議論されてきた。

米アリゾナ州立大学のサンチャイータ・ボルサクール准教授や印ラマン研究所のナムラタ・ロイ助教らの研究チームは、ダークエネルギー分光器(DESI)の光学データとLOFAR(低周波電波望遠鏡)の電波データを組み合わせ、ジェットを持つ数百の銀河を解析。電離した水素ガスが放つ「Hアルファ線」の検出を試みた。

全方位の観測データを平均した場合は信号が弱かったものの、電波ジェットの進路上に絞ると強いHアルファ線が確認された。特に、ジェットがCGMに突入する銀河近傍と、エネルギーを放出するCGM外縁部の2か所で顕著な輝きが見られた。対照的に、低温ガスを示すマグネシウムの痕跡は全方位へ均一に分布しており、ジェットの方向による偏りはなかった。

観測結果は、ブラックホールのジェットが細いビームのように通過経路上のガスを集中的に電離・加熱していることを示している。高温に保たれたガスは凝縮して銀河へ落下しにくくなるため、星の燃料供給が滞り、銀河の星形成活動が次第に沈静化していくと考えられる。

太陽系ほどの大きさしかないブラックホールが、数十万光年におよぶ銀河外縁部を攪乱し、銀河の長期的な進化にブレーキをかけている実態が示された。本研究成果は米学術誌『The Astrophysical Journal Letters』に掲載された。

TAKEAWAY
ブラックホールは単に物質を呑み込むだけでなく、強力なジェットを通じて銀河全体の星形成活動や長期的な成長の行方を決定づけている可能性がある。
情報源: 元記事を確認
sciencedaily.com