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地上望遠鏡の弱点である大気の揺らぎを克服するため、強力レーザーで高度約90kmに人工の星を作り補償光学で光の歪みを相殺する仕組みを解説します。
南米チリのアタカマ砂漠にあるパラナル天文台で、ヨーロッパ南天天文台(Eso)が運用する「超大型望遠鏡(VLT)」が、最大7本のレーザーを夜空へ照射しながら観測を行っている。2025年末に最新レーザーの配備が完了し、2026年現在はVLTを構成する4基の主望遠鏡(アントゥ、クエジェン、メリパル、イエプン)すべてから同時にレーザーを発射し、連携して観測できる体制が整った。
地上の望遠鏡は、地球大気の揺らぎによって天体からの光が歪み、画像がぼやけてしまう課題を抱える。この歪みを打ち消すのが「補償光学」と呼ばれる技術だ。VLTでは、磁場に浮遊させた圧電材料の鏡を極めて高速で変形させ、大気による乱れをリアルタイムで相殺する。
補償光学を機能させるには基準点となる明るい星が必要だが、観測したい空域に適当な星が存在しない場合、天文学者はレーザーを用いて「人工の星」を作り出す。地上から放たれたレーザーが高度約90キロメートルにある大気中のナトリウム層を励起し、光を放ったナトリウム原子を望遠鏡の鏡が捉えることで、狙った位置に擬似的な基準星を出現させる仕組みだ。
かつての装置は有毒な液体色素を扱い、安定稼働までに長日数の調整を要したが、現在のシステムはボタン操作一つで一晩中安定した照射を維持できる。レーザーの出力は一般的なレーザーポインター上限の約4000倍に相当する22ワット、ビーム径は30センチメートルに達する。なお、上空を航空機が通過する際には自動的にレーザーを停止する安全機構も組み込まれている。
4基の主望遠鏡がレーザーを用いて連携することで、単独の望遠鏡を大きく上回る解像度と広い視野での観測が可能となっている。