地上望遠鏡が大気へ強力レーザーを放つ理由 南米チリのVLTが「人工の星」を作る仕組み

地上望遠鏡から夜空へ照射されたレーザーが大気上層で輝く人工の星を作り出し、光の歪みを補正する様子を描いた説明図
AI生成イメージ(概念図)
宇宙報道記事

地上望遠鏡の弱点である大気の揺らぎを克服するため、強力レーザーで高度約90kmに人工の星を作り補償光学で光の歪みを相殺する仕組みを解説します。

3 POINTS
●地上の望遠鏡は大気の揺らぎで天体の光が歪むため、鏡を変形させて歪みを打ち消す「補償光学」を用いる。
●基準となる明るい星がない空域では、レーザーで高度約90kmのナトリウム層を励起し「人工の星」を生成する。
●チリの超大型望遠鏡(VLT)は4基の主望遠鏡から最大7本のレーザーを放ち、連携して高精細な観測を実現している。
最大7本
VLT全体で夜空へ照射されるレーザーの総数
約90km
人工の星を作る大気中ナトリウム層の高度
22W
レーザー1本あたりの出力(ポインター上限の約4000倍)
4基
レーザーを同時照射して連携観測できるVLT主望遠鏡の数
WHY IT MATTERS
地上望遠鏡は宇宙望遠鏡と異なり大気の乱れで視界がぼやけますが、強力レーザーによる人工星と補償光学の進化により、地上にいながら宇宙空間に匹敵する極めてシャープな画像を取得できるようになります。

南米チリのアタカマ砂漠にあるパラナル天文台で、ヨーロッパ南天天文台(Eso)が運用する「超大型望遠鏡(VLT)」が、最大7本のレーザーを夜空へ照射しながら観測を行っている。2025年末に最新レーザーの配備が完了し、2026年現在はVLTを構成する4基の主望遠鏡(アントゥ、クエジェン、メリパル、イエプン)すべてから同時にレーザーを発射し、連携して観測できる体制が整った。

地上の望遠鏡は、地球大気の揺らぎによって天体からの光が歪み、画像がぼやけてしまう課題を抱える。この歪みを打ち消すのが「補償光学」と呼ばれる技術だ。VLTでは、磁場に浮遊させた圧電材料の鏡を極めて高速で変形させ、大気による乱れをリアルタイムで相殺する。

補償光学を機能させるには基準点となる明るい星が必要だが、観測したい空域に適当な星が存在しない場合、天文学者はレーザーを用いて「人工の星」を作り出す。地上から放たれたレーザーが高度約90キロメートルにある大気中のナトリウム層を励起し、光を放ったナトリウム原子を望遠鏡の鏡が捉えることで、狙った位置に擬似的な基準星を出現させる仕組みだ。

かつての装置は有毒な液体色素を扱い、安定稼働までに長日数の調整を要したが、現在のシステムはボタン操作一つで一晩中安定した照射を維持できる。レーザーの出力は一般的なレーザーポインター上限の約4000倍に相当する22ワット、ビーム径は30センチメートルに達する。なお、上空を航空機が通過する際には自動的にレーザーを停止する安全機構も組み込まれている。

4基の主望遠鏡がレーザーを用いて連携することで、単独の望遠鏡を大きく上回る解像度と広い視野での観測が可能となっている。

TAKEAWAY
大気中のナトリウム層をレーザーで光らせて人工の星を作り、鏡を高速制御することで、地上望遠鏡でもブレのない天体観測が可能になります。
情報源: 元記事を確認
bbc.com